最終インタビュー
20131226

彩の国さいたま芸術劇場行われた「詠う~あなたが消えてしまうまえに~」を無事に終え、ユニットとしての第一歩を踏み出したアルトノイ。今回の座談会では、公演を振り返って思うことや、次回公演について話を聞いた。
参加者:島地保武、酒井はな、さとうみちよ、石黒宇宙、金七恵

  • 金七恵
    「詠う~あなたが消えてしまうまえに~」の公演から2ヶ月が経ちましたが、改めて振り返ってみると、どんな事が思い浮かびますか?

  • 島地保武
    あの時出来た最高のものはやれたと思うし、悔いはないですが、やっぱり作品を作った後にフランクフルトに戻ってしまい、約2ヶ月間があいて、帰国してから再び3日間劇場で稽古、そして本番というスケジュールは難しかったですね。作品もやっていくうちに成長していくので、やっぱり再演したいですね。そこから、もっと個々のシーンの強度を高めていきたいというのはあります。
    アルトノイは、まだまだ出来立てだから、もっと色々な舞台を経験して、より計算できるようにしたいと思います。

  • 石黒宇宙
    蓮沼さんの音楽で踊ってみていかがでしたか?

  • 島地保武
    蓮沼さんの音楽は、優しい所が魅力です。踊っていて、音がうるさくて、挑発的だったり、音が前に走っちゃって、こちらがついていけない、なんて事がある時もあるんですが、蓮沼さんの音楽は全くそんなことはなかったんです。そこにいてくれる、背中を押してくれる、という感じがしました。聞こうとしなくても聞こえてきましたね。

  • 石黒宇宙
    山下達郎の『ついておいで (Follow Me Along)』を使った意図はなんだったんでしょう?

  • 島地保武
    どうしてあの曲を使おうと思ったかの経緯は、まず、外国人のDJの友人が日本に来たとき、山下達郎のレコードをもらったそうなんですね。
    彼に僕は音楽を選曲してもらいCDを作ってもらう機会がありました。その中に、あの山下達郎の『ついておいで (Follow Me Along)』が入っていてそれを聞いてピンときたんです。
    それで、今回、この曲を利用してドラマ仕立てのシーンを作ったんです。
    あのシーンでは「当たり前だと思っていたものがなくなる」「幸せがあったのに、それが急に無くなってしまう」といったようなのをやりたかったんですね。
    それで、実際に自分たちの結婚式で着た衣装を着て『ついておいで (Follow Me Along)』を踊ったんです。あの部分は評判が良かったですね。僕、酒井さんのバレエ先生に、全然褒められたことないのに、「ああいう表現もできるんだ」と言ってもらいました(笑)。

  • 金七恵
    衣裳についても、色々と試行錯誤があったようですね。

  • 島地保武
    土壇場で色々変わりましたね。ビジュアル的なところも空間とあわせて、色々計画するんですが、僕も踊るから、着てみて気持ちが乗るかどうかが最終的に重要だと思いますね。それは身につけるまでわからなくて、着て「ちょっと違うな」と思ったら、そこは無理しないようにしました。

  • さとうみちよ
    衣裳は制作するのに物理的な時間の制約があるから、できないタイミングになったら、「もう、できません」と言うしかないんですよね。なるべくそうならないようにやるんですが、今回は公演会場がすごく特殊だと思いました。

  • 島地保武
    それは確かに、実際にあの場に立ってみないとわからないですね。客席からは見やすい作りだとは思いますけど、コンクリートの壁で、床も演劇用に作られていて、踊るための床ではないので。

  • さとうみちよ
    「パジャマ」と呼んでいた衣裳を着る予定だったところを、公演直前に稽古着に変えたのは良かったと思います。赤が引き立って、変に色が入るよりわかりやすくなって、後半の衣裳はたくさんの色が入るのでメリハリが効くかな、と思いました。

    あと、私、これまで衣裳を作ってきて「綺麗な衣裳だね」と言われたことはありますが「綺麗すぎる」と言われたのが初めてでした!アニマル柄のタイツのことなんですが。

  • 島地保武
    着てみたら、落ち着かなくなっちゃったんですね。

  • さとうみちよ
    タイツは素材としてツルンとした印象を与えてしまっていたことや、実際に着て踊ってもらうとアニマル柄自体が身体よりも目立ってしまっていたので、そこが「綺麗すぎる」というのにつながったのかなと思いました。
    それで、島地さんの方は黒のパワーネットをかぶせてアニマル柄はうっすら見える程度の黒を基調としたスパッツに変更し、素材感が出る様に数種類の生地を足したり、動きやすさも考えて生地を一部を抜いたり透かしたりして全体にレイヤー感を出しました。

    酒井さんの方は青いワンピースを上に着る事で、直接見える柄の面積が減らせたのと動いた時にチラと見える効果が生まれました。最後は二人とも着こなしてくれたので結果オーライでしたよね。

  • 島地保武
    青いワンピースは、最初から自分の中ですっきりきていましたね。あれも最初無かったんですけど、作ってもらって。

  • さとうみちよ
    8月に今回の作品をアーキタンツでやった際に島地さんから「余韻が欲しい」と言われたのをきっかけに作ったんですよね。あの後すぐ島地さんはドイツに帰ってしまうことになっていたので「それまでになんとかしなくちゃ」と思って、絵を描く時間もなくて、どういう風な感じになるかだけ口頭で伝えて、本物を見てもらったという感じでしたね。

    コンテンポラリーダンスの作品作りは、演劇やクラシックバレエと違って、脚本がないですよね。なので、皆でベースを探している感じがします。感覚的には、薄氷の上を「あ、こっちは違う」「こっちは行けるかも」とそろそろ歩く感じです。それが、ある瞬間から、全員が「こっちだ」と判断できるようになって、それがすごい面白いですね。
    そういう風に行くと、今回は、最後までわからなかったんですよね。アニマル柄のタイツは劇場入った時点でフィックスしたなと思ったんですが、パジャマは最後までどうなるんだろうと思って。よくあることではあるんですが、そこは読めなかったですね。

  • 島地保武
    色々な要素を足して、足して、足して、最後に引いたという感じでしたね。

  • 石黒宇宙
    今回、公演までに島地さん以外の方にもインタビューをして記事をウェブサイトにアップしましたが、島地さんは、何かそこから影響を受けたことはありますか?

  • 島地保武
    自分が、実際メールでやりとりしてコミュニケーションとっている相手なんだけど、改めて、さとうさんや蓮沼さんが、どういう視点で作品作りを見ていて、「私のやっていることってなんだろう」というのを考えながら話しているのを見るのは興味深かったし、それを読んで、「あ、この人はやってくれるな」と思いました。衣裳のさとうさんも公演前のインタビューで「実際どうなるかわからない」と言ってくれていて、「踊って始めて分かることがある」ということを、理解してくれていたので。

  • 金七恵
    お互いのコミュニケーションから、作品が大きく形作られているのは、感じました。

    次回の公演についても、すでに予定が決まっているそうですが。

  • 島地保武
    次は、3月29日にNHKの「バレエの饗宴 2014」に参加することになりました。
    この前の公演があっての今だし、次に繋がってよかったなと思っています。

  • 金七恵
    内容については、どういったことを考えていらっしゃいますか?

  • 島地保武
    最初は、「詠う~あなたが消えてしまうまえに~」を再演しようと思ったんですが、主催のNHKさんが「どうしても新作をやってもらいたい」と言ってくださったんです。
    今回は、チェリストの古川展生さんがバッハを演奏してくれます。僕たちと古川さんの3人で舞台に立つんですが「ダンスありきのチェロ」ではなく、全員が同じ立場で舞台に立てればいいなと思っています。何かを表現するよりも踊りたい、ただ「音になりたいな」と考えています。

  • 酒井はな
    バッハの曲を、そのままビジュアル化するようになれたらいいな、と思います。私たちが提示するストーリーではなく、音楽から生まれるストーリーがあると思っているから、素直に音楽を体で表現できればな、と。

  • 島地保武
    究極ですね。

  • 金七恵
    「前回の公演あっての今」とのお話がありましたが、前回から引き継ぐモチーフなどはなく、新たなことに挑戦するということですね。

  • 島地保武
    前回もテーマは大して無かったですしね。

  • 酒井はな
    「愛」だったでしょ(笑)

  • 島地保武
    そう、愛がテーマだったんですけど、それは毎回そうだなと思ってます。奇をてらったり、コンテンポラリーっぽくするのは、意図していなくても、どうせなっちゃうから、やらなくていいかなと思っています。スパッと歯切れのいいものを、踊ろうと思っています。

  • 次回公演 情報
    NHKバレエの饗宴 2014
    日時 : 平成26年3月29日 (土) | 開場 午後4時 , 開演 午後5時
    会場 : NHKホール (東京都渋谷区神南2−2−1)
    主催 : NHK、NHKプロモーション
    詳細 : www.nhk-p.co.jp

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